備前福岡屋カネヒコ酒店

熟成酒

当店低温倉庫にて、15年間、零下熟成させた酒。

春鹿 封至善

瓶詰時のスペック
純米大吟醸 日本酒度+5 酸度 1.4 アミノ酸度 1.0

天然カルシウム「カルゲン」と堆肥によるミネラル大地を基本とした有機カルゲン農法によるカルゲン好適米を使用。この好適米を昔ながらの手作りで作り上げたのが、この封至善。
華やかな果実香を備える、やさしくスルリとした口当たりと繊細な味の広がりを持った純米大吟醸。

現在は製造終了の希少な逸品。

今日、従業員、妹家族とBBQがてら、去年に続きもう一本開封。

【色】
化学的熟成をできるたけ進めないよう零下熟成させたため、程よい照り。

【香り】
老ね香皆無…華やかな香りは落ち着き、香りというよりも直感的に円熟の極みに達した大人の魅力を感じさせる何かが鼻孔をくすぐる

【舌触り】
さわれない。実際にはそれに舌で触れているけれど、まるで空気のように流れていく。

【味わい】
口中にふわっと一瞬だけ広がる。気を抜くと逃してしまう…
豊かな旨み…やさしい甘み…ほのかな渋み・主張することのない酸味。

【キレ】
キレというには、あまりにも刹那。
キレを感じることもなく、ただただ消える。

【開封後の飲み時】
開封して、15分までが、上記の感想。
それから、徐々に旨みと甘みが増してゆき、BBQのお肉にも負けない主張を備える。
45分で飲み干すのが理想。

時の流れは絶対的なもの

その重みと恩恵を感じつつ、それを逃さぬよう従業員と飲み干しました。

 

《酒の熟成》

酒の熟成には、アルコールと水がなじむ「物理的熟成」と成分の化学変化による「化学的熟成」がございます。

①物理的熟成

酒の含有アルコールが熟成することで水となじみ滑らかになる現象。これは、アルコール分子一個の周りをいくつかの水分子が取り囲み「クラスタ」といわれるものを形成することによるもの。

余談

電子レンジ燗よりも湯煎のお燗がおすすめなのは、電子レンジを使用するとマイクロ波によって水分子が揺らされ、せっかく形成されたこのクラスタが壊されてしまうからです。

②化学的熟成

主に酸化による現象。『熟成とは緩やかな酸化』であり、『劣化とは急激な酸化』であります。熟成酒が、一般的に琥珀色であるのはブドウ糖とアミノ酸が結合し、メラニン(着色成分)をつくるためです。また、糖分が酸化することで香りの「フルフラール」という成分の甘い香りや有機酸が酸化することで、老香(ひねか)の成分ソトロンができます。

化学的熟成は、香りを落ち着かせ、味わいは重厚で力強い酒質を生み出します。

 

酸化の速度

今回、ご紹介した封至善は、-4℃にて零下貯蔵。

計算上、-5℃のお酒は、65℃のお酒に比べて、酸化速度を1/128に押さえることができます。

10年以上貯蔵するため、物理的熟成に重きをおき、化学的熟成をできるだけ抑え熟成させ、やわらかさを最大限に引き出し、その中で可能な限り軽やかな酒質を目指したものでした。